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国際バカロレア(PYP)の理論と実践:POI編(第1回)

こんにちは!広報アンバサダーの枡野です。

日本では徐々に、「国際バカロレア」というキーワードが注目されるようになってきました。

かくいう私も、国際バカロレアを知ってからわずか1年足らずの新参者ですが、知れば知るほど奥深い国際バカロレアの世界に魅了され続けております。

ところで、国際バカロレア(PYP)の理論については、公式ウェブサイトをはじめとして沢山の情報が見つかるのですが、その実践については情報が少なく、とりわけプライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP)を実践している1条校(※)は日本にまだ6校しかないため(2021年7月時点)、その素晴らしさが世の中に浸透しづらい状況にあります。

そこで、英数学館小学校におけるPYPの理論と実践を取材し、その一部をこのnoteで共有していきたいと思います!(不定期、全6回予定)

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POIってなんだ?

一般的には、小学校の学習科目というと、国語・算数・理科・社会、、、というものを思い浮かべるのではないでしょうか。

近年はそうした科目を横断した教育の必要性が叫ばれていますが、なぜ教科横断型の教育が必要かというと、「何のために勉強しているのかよく分からないから」です。

言うまでもなく、子供たちの生きるチカラを育むために、様々な教科を勉強するわけですが、いつの間にか「学力を身につけるための勉強」「算数の試験で良い点数を取るための勉強」になってしまうという経験、誰しもあるのではないでしょうか。

いわゆる手段と目的を履き違えてしまっている状態です。

この問題に対して、教科横断型の先駆けとも言われる国際バカロレアではどう対応しているかというと、特に3〜12歳を対象とするPYPでは、POI = Program of Inquiry、直訳すれば「探究プログラム」と呼ばれるものを理論的な核としています。

POIでは、教科の代わりに「6つのテーマ」を学習過程の中心と位置付けています。

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・Who We Are
・How We Express Ourselves
・Where We Are in Place and Time
・How We Organize Ourselves
・How the World Works
・Sharing the Planet

これら6つのテーマを軸に、1年生から6年生まで首尾一貫して探究型学習を進めていこうというわけです。

...!?

ちょっと何を言っているのか分かりませんよね。私も、初めて知った時には驚愕しました。

だって、英語だし、哲学みたいだし、J-Popの歌詞か厨二病のツイートかも分からないようなことが、国語算数理科社会の代わりになるわけがない!

ところが、英数学館小学校は、文部科学省が定める1条校ですので、この6つのテーマの中に、学習指導要領に定められている各教科の指導内容を盛り込んでいます。


どうやって各教科を学ぶのか

具体的に見ていきましょう。

この第1回では、「Sharing the Planet(この地球を共有するということ)」が、どのようにして授業に落とし込まれているのかを、小学1年生を例にとって紹介していきます。

まず、国際バカロレア機構から、「Making the PYP Happen」という、マニュアル本が公開されています(!)。

それも、親切なことに日本語訳まで出ています。それによると、

この地球を共有するということ
限られた資源を他の人々そして他の生物とどのように分け合うかということに取り組むうえでの、権利と責任について、コミュニティーとは何か、そしてコミュニティー内およびコミュニティー間の関係性、機会均等の実現について、平和そして紛争解決についての探究。

なるほど、日本の一般的なイメージでいうと、理科と社会の組み合わせ、というところでしょうか。

しかし、こんな難しいこと、小学1年生の子供たちにどこまで考えられるのかしら?

そこで、英数学館小学校では、1年生から6年生まで徐々に探究を深めていけるように、プログラムを組み立てていきます。

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子供たちの成長に合わせて、地球との関わり方が徐々に広がり・深まっていく様子が感じられますでしょうか!?(もう2年生あたりから、イマドキの子供たちってスゴイなぁと思ってしまいますが、、、)

ところで、英数学館小学校は1条校ですから、ここに学習指導要領の各教科の内容を織り込んでいく必要があります。具体的には、このSharing the Planetの中に、

<生活>
(7)動物を飼ったり植物を育てたりして,それらの育つ場所,変化や成長の様子に関心をもち,また,それらは生命をもっていることや成長していることに気付き,生き物への親しみをもち,大切にすることができるようにする。
<国語>
B-ア:経験したことや想像したことなどから書くことを見つけ,必要な事柄を集めたり確かめたりして、伝えたいことを明確にすること。
B-ウ:語と語や文と文との続き方に注意しながら,内容のまとまりがわかるように書き表し方を工夫すること。
B-エ:文章を読み返す習慣を付けるとともに,間違いを正したり、語と語や文と文との書き表し方を工夫すること。
C-イ:場面の様子や登場人物の行動など、内容の大体を捉えること。
C-オ:文章の内容と自分の体験とを結びつけて、感想を持つこと。

というように、理科だけでなく国語の内容も盛り込み、教科書を適宜用いながらパッチワークのように組み上げることで、「教科横断型の探究学習」が実践されているのです。

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今も昔も1年生

ある日の授業では、「犬が生きていくのに必要なのは、食べ物と、水と、あと何でしょうか?」と先生から問いかけられて、生徒たちは4人ずつのグループになって話し合っていました。

知識の詰め込みではない、英数らしい探究型スタイルが、1年生から少しずつ醸成されていきます。(ちなみに、この授業は全て英語!入学してからたった3ヶ月で、先生の伝えたいことを英語でなんとなく理解してしまうだなんて、1年生たちの順応性には驚かされます。)

とは言え、同じ「Sharing the Planet」というテーマで、今も昔も変わらない情景もあります。アサガオです。

植木鉢に種を植え、水やりして、成長を観察する。夏休みになると、あの重い植木鉢を自分の家に持ち帰って、花が咲くのを待ち焦がれ、絵日記を描く。

英数学館小学校には、何十年と培われてきた、日本の小学校教育の姿が今も受け継がれています。

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※注釈
≪1条校≫ 
学校教育法(昭和22年法律第26号)の第1条に掲げられている教育施設の種類およびその教育施設の通称。文部科学省が定めたカリキュラムに取り組む学校のことを指します。インターナショナルスクールなどの多くは1条校に該当しません。

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