IBのVisual Arts集大成!Art Exhibition作品紹介①
今回は、卒業して間もない高校3年IBクラスの生徒が昨年7月に開催したArt Exhibition(展示会)のおはなしです。
が、その前に国際バカロレア(IB)ディプロマ・プログラム(DP)のVisual Arts(美術)について少しご紹介します。
Visual Arts
以前このEISU noteで、ある生徒のプロセスポートフォリオをご紹介したことは、覚えていますか?
Artは、DPカリキュラムの6つのグループ(教科)の1つに位置づけられ、音楽、美術、ダンス、フィルム、文学と演劇から選択をします。
英数学館は学校としてVisual Arts(美術)を選択しています。
そして、ArtにはIB最終試験がなく下の3点を国際バカロレア機構(IBO)と教師(内部評価)が評価することで点数が決定します。配点比率は下の通りです。
配点比率を見てもわかる通り、Art ExhibitionはVisual Arts(美術)を選択した生徒たちの集大成となる作品発表の場であり、英数学館IB生の一大イベントです。
Art Exhibition
4~11作品を展示し(Higher LevelかStandard Levelかの履修選択により異なる)、それぞれにキャプション(1つの作品につき最大アルファベット500字,日本語 200 字)を付けます。
それに加えて、400~700語(日本語の場合は800 ~1400字)以内の、生徒の意図の説明に加えて、キュレーションの方法論を踏まえて作品の発表についどのように考慮したかを説明する、「キュレーター・ステイトメント」を書かなくてはなりません。
そうして迎えたArt Exhibitionは例年ならば秋桜祭(文化祭)に合わせて一般公開され、たくさんのお客様を迎え、生徒が作品について解説しながら会場を案内します。
今年度はIB最終試験のスケジュールを考慮して、Art Exhibitionの日程を早くしたため、一般公開はありませんでしたが、それぞれの「好き」を表現したすばらしい作品が展示されていました。
今はもう解体されてしまいましたが、アートヴィレッジの1階ホール全体を使って展示された数々の作品は圧巻の一言でした。
そして声を大にして言いたいのは、これらの作品群は美大志望ではない一般の生徒の作品ということです。
校内だけでの展示なんてもったいない!ぜひみなさまにも、作品をご覧いただきたい!
その思いからいくつかの作品を前編後編として、ご紹介させてください。
「茶会」
まずご紹介するのは、「茶会」をテーマにした作品の数々です。
作者は自分の「好き」を深掘りしていったときに、お茶が好きだと気付きました。
お茶は、中国から伝来後も日本独自のお茶の文化となり、古くから日本で親しまれてきました。
日本だけではなく世界中で、お茶は形を変えその地の文化として根付いています。
そこで、「茶会」をテーマに自分の住むお国柄やアイデンティティを表現したいと思い、制作に取り組んだそうです。
そのプロセスで、たくさんの芸術家にインスピレーションを受けた様子がよく伝わる、興味深い作品群となりました。
こちらの作品は、パブロ・ピカソ(Pablo Ruiz Picasso, 1881年10月25日 - 1973年4月8日)から影響を受け、生まれました。
キュビズムという、いろいろな角度から見た物の形を一つの画面に収めるという独自の手法からインスピレーションを受けています。
急須や湯呑、ティーポットにティーカップ、そしてお茶を飲んでいるときに自分が見ている景色、自分の「好き」を詰め込んだ作者お気に入りの作品となりました。
ポイントは、新聞の文字などすべてを描くのではなく部分的に描いたことで、観る人それぞれの視点で想像して感じてほしいという思いが込められています。
続いて、こちらの作品は長谷川 等伯(はせがわ とうはく、天文8年(1539年) - 慶長15年2月24日(1610年3月19日))の影響を強く受けています。
「茶会」というテーマを考えたときに、茶室にあるであろう屏風にフォーカスした、茶会の文化と日本の文化に関連した作品を作ろうと思ったそうです。
ただ水墨画やお茶という、日本の伝統的な屏風を作るだけでは昔の真似事でしかないので、オリジナリティのあるものや現代に通じるテーマを持ったものを創作したいと考えました。
まず古ぼけた感じを出す方法として、屏風にお茶が上塗りされています。
そしてところどころ焼け焦げている部分があるのですが、それは現代の「環境破壊」を象徴しています。
昔の森林はキレイだったけど、現代の森林は伐採され失われ続けている。
そのメッセージを伝える表現の方法として、屏風をところどころ線香花火で焼き、長谷川等伯の屏風にオリジナリティを加えた現代版のリメイク作品となっています。
その他にもいくつかの作品が展示されていましたが、急須や湯呑など日頃からなじみのある道具をもちいて、作者のアイデンティティにより唯一無二の「茶会」が表現されていました。
「好き」を突き詰めた「茶会」にご参加くださり、ありがとうございました。次回も引き続き、Art Exhibitionのおはなしです。
こう、ご期待!