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小中高のオンライン授業構築12のプロセスと気を付けるべきポイント

オンライン授業構築マニュアル整備の背景

新型コロナウイルス感染症の影響で全国的に教育がストップし困難に直面する中で、英数学館は2020年4月15日二度目の休校措置が決定した同日、授業を含む学校教育活動のオンライン化を決定し、翌週から実験的に様々な取り組みを行ってきました。

悪戦苦闘しながらも立ち上げたオンライン授業では、日々試行錯誤を繰り返し実施していく中で、様々な検討すべき課題も浮き彫りとなりました。

こうした取り組みに対して、オンライン授業構築のためのテクノロジーツール等については有益な情報を目にするものの、組織作りや保護者・生徒とのコミュニケーション、教員間の情報共有などオンライン教育の運用や検討すべき課題などについての情報があまりない状況でした。

教育関係者の方々からの当校の取り組みに対する質問も多数寄せられたことから、当校のこれまでの取り組みについてまとめた、「オンライン授業構築マニュアル」を2020年5月7日にホームページで公開しました。

そして9月現在も、新型コロナウイルス感染症収束のめどは立っておらず、さらにお問い合わせをいただいたことから、このnoteでもオンライン授業マニュアルを掲載することとしました。

まず今回は、第1弾として「双方向オンライン授業構築の12のプロセス」をご紹介します。今後のオンライン授業シリーズでは、成功や失敗、落とし穴など、生徒とのコミュニケーションから授業の作り方、組織の体制について、など実体験に基づいたリアルな体験談をお届けする予定です。

オンライン化検討前の学校の状況

3月の休校措置は当校としても予想外の出来事でしたが、高校のIBクラスに関わっている教員だけは、新高校3年生の授業時間数確保のために、Zoom(ズーム)を使い、双方向のオンライン授業を実施していました。

しかし、IBクラス以外の生徒には、従来の紙ベースの課題の配布や、Classi(クラッシィ)の動画配信や課題配信に対応は止まっていました。

大半の教員はオンライン授業の経験はありませんでしたが、IBクラスの生徒、それに関わる教員だけは双方向オンライン授業の経験があったことで、3月の休校中に、新年度に向けて通常の学校生活が送れるように準備を進める一方、同時に再び休校になったときの準備に取り組めていたので、休校措置決定の同日にオンライン化の決定ができました。

では、ここからは当校の双方向オンライン授業構築までの12のプロセスをお届けします。


オンライン化に向けた12のプロセス


1. 学校の方針を検討する

 A)臨時休校明けを見据えた対応
・大学入試等の予定が変更になる保証がない状況。学習進度を遅らせることによる生徒の人生への負の影響を与えるわけにはいかない。

・私学を選んでくださった、保護者の期待や思いに応えたい。

・教員のICT化に全学を挙げて挑む好機。全教員が一気に教授法を21世紀型にシフトすることが、コロナの長期化を見据えた上でも、生徒の未来を考えた上でも重要と判断。


以上のことを検討した上で、英数学館では
「オンラインでも年度当初に決まった時間割に沿った授業ができるよう準備すること」
を学校としての方針としました。

※本校の気づき
学校の存在価値が強く社会から問われる中、私たちは何者で、社会のために何をすべきかを考えたとき、皆で子どもたちとともに前に歩みを進める覚悟が定まりました。

B)組織的な対応
・校長を中心とした幹部職員全員で状況を共有。

・オンライン授業の実施進捗の確認および質の維持・向上のための責任担当者を明確化。

・オンライン授業はICT担当だけが担うものではなく、関わる全ての教員が役割と責任を全うすることではじめて授業の質が担保される。
※『教える』以外の要素が複雑に絡むのがオンライン授業。

★「非常勤教員も含めて全教員で進める」と早々に決めたことで、実技系科目も含めて授業のオンライン化に一斉に取り組めました。教員間のコミュニケーションが格段に増え、教科・学年を超えた、教員同士の学びあいができました。
ただし、保護者との情報共有や生徒とのコミュニケーション、教員間の情報の一元化等についてツール整備等も含めてさらなる改善が必要と認識しました。

C)失敗を恐れず実行(課題が見えたら迅速に対応)
・まずはやってみよ
・責任を上長がとる

この2点を校長から全体に発信する。100%の成功を最初から望むのではなく、失敗を糧に組織として成長していくPDCAサイクルを目指しました。
保護者や生徒に対して、現状を是とすることなく、日々改善することを前提としてコミュニケーションをとることが重要。

★とは言え、ICTへの取り組みなど、前向きになれない教員もいましたが、時には校長から檄を飛ばすことに加え、学校の将来像を踏まえたコミュニケーションも大事である。一方で、孤立感や孤独感をいかに感じさせないようにするかの視点は常に必要です。

2. 学習支援の方法を検討する

・単なる課題プリントの配布では全てを子どもに委ねることとなり、学びとして十分ではないと判断。オンラインホームルームおよび双方向の実践を決定。

・保護者や生徒の不安、自宅待機下でのストレス、不慣れな環境での学習などに鑑み、教員と児童生徒、保護者との対話環境の構築、それに加えて教員間の情報共有を手厚くすることが不可欠。

★紙の課題を否定するわけではないが、コロナウイルスの鎮静化に時間がかかることも想定し、毎回課題をすべての生徒の自宅に郵送することは非現実的と判断。オンラインで出来る限り行い、どうしても、という時だけ人の手で作業することを基本方針としました。
次世代を担う子供たちの新たな学び、という側面も重視しました。

3. 学校のインフラ状況を把握する 

本校の場合、校内にWi-Fi環境は構築されていたが、全児童・生徒の同時接続に懸念あり。

学年別で時間をずらしたホームルームの実施や、長時間同時に接続したらどうなるのか、学内で実証実験を1日に複数回行い、校内ネットワーク力の限界点の把握をする。

★校内ネットワーク力の限界調査を実施したことで、学年ごとの分散使用の目途が立ちました。

4. 生徒の自宅の学習環境を調査する

生徒の各家庭でのネットワーク環境のアンケート調査を紙とオンラインで実施。回答と実際が一致しないケースが散見され、ホームルームでの生徒からの聞き取りや、家庭での電話連絡にて解決。

少ないながらも、従量課金制のスマホでのみ接続しているケースもあり、月末に向けて環境が厳しくなる場合も予想され、引き続き調査が必要と判断。

◎Wi-Fi環境がない家庭への対応
家庭でも安定した通信環境の構築は子どもの学びの継続には不可欠。携帯電話会社が実施する通信料無制限のサービスへの加入・プラン変更を依頼する保護者向け文書を作成・配布。

※大手携帯電話会社には、新型コロナウイルス感染拡大対応として50GBまで無償とするプランあり

5. 教育支援体制を整える

A)個々の教員の責任を明確化
教育支援体制を整え、以下のように運営。一人が責任を放棄すると、全体の教育支援体制に影響が生じることを全体で共有、理解を促進。また、校長が職員朝礼にて、この有事に際し、子どもの健康と学びの機会を守るため、各人の責任ある行動を果たすよう(厳しく)指示。

※危機管理運営については、法人本部(理事長)と事務局長を含めた学校幹部教職員との密なコミュニケーションがあってはじめて柔軟かつ迅速な判断・対応が可能。

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★教員も学校への出校を控えねばならない状態のため、報告・連絡・相談が当初はなかなか徹底されませんでした。
特に、各教科のオンライン授業で欠席した生徒情報や、インターネットに繋げることのできなかった生徒情報が担当に正確に伝わらず、生徒へのフォローアップが遅れる場合などがありました。

B)教員間のコミュニケーション方法の確立
休校中の教職員の朝礼および会議は Zoomで実施。
特に朝礼は全教員参加必須。

・全員に新たに発行したGmail および校内サーバー上でのファイルデータ共有システムを活用
⇒既存の教職員メールはあるが、Zoom やGoogle サービスを利用しやすいよう新たにGmail を発行
⇒遠隔環境は「しつこい」くらいの確認とコミュニケーションが不可欠。朝礼の欠席者は要確認

・緊急の場合は、各教員の携帯電話を活用(学内に教職員連絡網は整備)

★オンライン職員朝礼は効果絶大でした。非常勤講師も含めて参加してもらっています。また、これが常態化されると、学内の各種会議も普通にオンラインで、という話になっていきます。
外国人教員との情報共有にしっかり手間をかけることも大切です。朝礼を含む各種会議の内容の通訳や、日本語によるメールに英語翻訳も同時併記するなども必要です。(Google 翻訳も最近は精度向上)

C)保護者とのコミュニケーション方法の確立
【学校から保護者への連絡】
・既存の一斉メール(Line-net)を使用(ファイルの添付は不可能/文字数制限あり)
・担任から家庭への電話、メール

【保護者から学校への連絡】
・電話(学校窓口⇒担任・教科担当・スクールカウンセラー/日中・通常時間内)
・緊急対応窓口(小学校副校長携帯・中高教頭携帯/夜間・休日など)

※万一ご家族等近親者に新型コロナウイルス感染が発覚した場合、保護者は半ばパニック状態に陥る可能性も想定。
学校は時間外対応してご家庭への支援体制を強化。
※課題⇒保護者も多忙ゆえ、教員の業務時間内に繋がらないケースも多く、今後は、教員の学校業務専用メールアドレスを伝え、さらなる状況の改善を図る。

★今回のように子どもの学校生活や学びが長期で止まってしまう可能性のある緊急時においては、学校が携帯電話(またはPHS)を各教員に貸与するなどし、生徒や保護者が困ったときにすぐに担任に相談できるのも一案です。

★オンライン保護者面談は有効でした。交通機関をつかっての来校を希望されない方へも対応できました。

D) 生徒とのコミュニケーション方法の確立
・全校生徒にGoogle アカウントを発行、付与
⇒Gmail・Google Classroom を介して教員と生徒は相互連絡
※Google アカウント発行により、全生徒がG-Suite のサービスを利用可能に

・Zoom による個人面談(子どものストレス対応・進路、学習等の不安に関する面談)

・電話(C.と同様に時間外緊急窓口は、副校長・教頭直通電話)

オンライン教育を行う最初のステップとして、個人ID アカウントを発行することが挙げられます。現代は様々な選択肢が存在するが、本校ではGoogle 社の個人アカウントを発行することで、様々な教育サービス(アプリケーション)を無料で使用することが可能になりました。

★特に新入生に対するケアは難しく、入学式を含め、2回のみの登校に留まっており、オンラインホームルームや授業だけで、教員、また生徒間の関係性を構築していくのは難しく課題が残りました。個別面談が重要です。

★当初は学校本体や担任、教師によりGoogle Classroom に加えてメールやカレンダー通知、電話や郵送など様々なコミュニケーションラインが混在し、受け手側の生徒に混乱があったが、コミュニケーション方法を一元化するとの方針により、現在改善をおこなっています。

6. 教員・スタッフへ周知する

教員研修の実施
・Zoom G Suite 研修(一部YouTube の活用含む)
教育系ICT の専門家(Google 認定イノベーター)に講師を依頼し、全教員参加のオンラインレクチャーを実施。オンライン教育実施のための基本インフラとして、Zoom とG Suite の活用を学習。

オンライン学習時に陥りやすいトラブル事例を紹介し、頻発しそうなトラブルは未然に回避(ex. イヤホンマイクの準備は必須、ミュートのオン・オフの使い分けなどの基本事項の他、Zoom のブレイクアウト機能の活用や、事前に動画を撮影しYouTube で配信する方法、またGoogle Jam board との連動による授業構築などの応用技術も含む)

★全員参加の教員研修はオンライン化の必須のプロセスです。常勤・非常勤の別なく実施します。この研修の成果が子どもの学びに直結するため、本校ではプロフェッショナル講師に依頼しました。

授業実施予定および進捗共有システム
・Google スプレッドシートの活用
大半の教員が自宅より講義を実施している中、各授業の実施予定の他、出欠確認や申し送り事項を確実に伝達するため、Google スプレッドシートを活用。入力と同時に全教職員のPC やスマホ画面で共有される。

★生徒が不慣れな環境下で終日パソコンや携帯に向き合うことでのストレスや飽きを避けるため、生徒が置かれている環境や負荷を十分に把握するとともに、教科担当間で授業内容や宿題・課題の量および質をコントロールすることも重要です。

7. 教育方法および学習支援の方針を保護者と生徒に周知する

A)学園の理念、教育の目的(ミッション)の提示
入学説明会で伝えた内容を今一度伝え、オンラインでもオフラインでも学校が目指すものが不変であることを説明
本校の場合: 生徒一人ひとりの力を最大限引き出す/国際感覚と協働する力を身につける等


B)オンライン教育実施の目的の伝達
・Aを前提とした上で、オンラインが単なるオフラインの代替ではないことを説明。オンラインならではの特性を生かした教育の実践を目指すことを宣言(通常期の対面授業を目指しても、オンライン環境では到底、授業の質では対面型に及ばない。発想の転換が必要。)


C)学校としての覚悟の伝達
教育および学校の存在意義が問われる中、子どもの学びを継続させるためにいかなる状況でも学校として工夫し続ける「覚悟」の表れとして、先ずは教員が「何事もあきらめない姿勢」と「学び続けることの大切さ」を行動で示し続ける。

★手紙やホームページを通じ、学校の姿勢が明確なメッセージとして各家庭に伝わることが大事です。

8. 授業を実施する

生徒への情報提供・周知
前提: Google Classroom の「ストリーム(トップページ)」に授業の形態や参加のための情報を記載

・Zoom の場合 ⇒ ミーティングルームへの招待のリンク、ID、パスワード
・YouTube の場合 ⇒ 該当の時間に視聴すべき動画のリンク、課題の提出方法など
・Classroom の場合⇒ 課題の内容説明や提出期限に関する指示など

複数の授業ツールを利用する場合においても、生徒の混乱を避けるために情報伝達は出来る限り一元化することが理想。

【双方向オンライン授業(Zoom)】
・Zoom 使用の場合の留意事項
 イ) 事前にZoom の招待メールを生徒に送る。
  ロ)Zoom のスケジュール管理機能を使って、授業の予定を送る。その際,件名に○○時間,科目名を入れる。

・ 授業開始時の留意事項
イ) 授業開始5 分前から準備し、生徒が参加するのを待つ。授業開始後もしばらくは出席確認をしながら参加を待つが、5 分経過後、全員の参加が確認出来ていなくても授業を開始。
ロ) 生徒の出席確認は、課題を提出させる(本校は評価には含めていない)

・ 授業時間について
連続する接続時間は授業時間の半分(50 分であれば25 分程度)が目安。
残り時間内で終わるような課題を提出させる。
⇒25 分以上は子どもたちの集中力が持続しづらいとの意見多数。

※生徒の疲労軽減策はオンライン授業では極めて重要。万一50 分間の教師からの一方通行授業が行われたとすると、その後の時限の授業での生徒の集中度に大きな影響を与えてしまう。厳しい言葉だが、教員の押し付けや学校のエゴにならないよう、配慮が必要となる。

★Zoom に別のソフトウェア(Microsoft Onenote やApple GoodNotes 5 等)を併用することで、画面上にホワイトボードを出現させる手法を用い、効果を上げている教員が複数いました。その際、専用のタッチペンがあると、それがマーカーやチョーク替わりとなり、有用でした。

【動画配信による授業(YouTube) 】
・ YouTube使用の場合の留意事項
YouTubeの限定公開による動画配信を推奨
(方法:一旦YouTubeに動画をアップロードしたのち、動画へのリンクをClassroomで周知する)

・動画の視聴時間について
25分程度とし、残り時間内で終わるような課題を提出させる

★Google Drive経由で動画を配信する場合、負荷が大きく生徒のダウンロードがうまくいかない場合が多いので注意しましょう。動画配信の際も、生徒の疲労軽減(集中力維持)の視点は重要です。

【オンライン教材を使った授業 (Classi) 】
・Classi使用の場合の留意事項
視聴すべき授業動画を予め選定しておき、指定した時間に生徒に視聴させる

・ 授業参加記録の確認
動画視聴時間、課題の提出記録がClassi上に残るのでそれを確認

★Classiが一時システムダウンしたが、現在は復旧しています。Classiに限らず、オンライン教材を使用する教員は、万一の事態に備え、代替案を常に準備して授業に臨むことを推奨します。

9. 授業後の報告方法(すべての授業方法共通)

6.にて紹介した「オンライン授業報告シート(Google スプレッドシート)」にて生徒の取り組み状況を全教員で把握。担任および学年主任と教科担当が同時に情報共有可能であり、問題や課題の発見、解決方法の検討が容易。

【授業担当者】
授業終了後、「オンライン授業報告シート」に当日の16時30分までに必要事項を記入

【担任】
「オンライン授業報告シート」を確認。問題が生じていた場合、他教員や家庭と協力した解決を検討

※全教員がルーティン化するまで時間はかかるが、あきらめないことが大事
※このシートにより、保護者からの個別の授業に関する問い合わせに迅速に対応できる

授業主体である教師の授業内容の質的向上を図り、教師間でのばらつきを無くす目的で、第三者による授業視聴を行い、フィードバックをおこなうことが望ましい。
対面授業と違い、副教材や宿題のためのアプリケーションを利用する場合、生徒が数十のアプリケーションを利用するケースがあるため、教科ごとの整理をおこなうなど工夫が必要となります。

10. 生徒の宿題(課題)について

プリントや問題集などの紙ベースの宿題と、オンライン授業での課題の配信とを併用。
概ね、以下3つの観点から詳述する。

・ 宿題(課題)についての考え方
・宿題(課題)のやり取りに関わるメリット
・ 宿題(課題)のやり取りに関わるデメリットとその対策

【宿題(課題)についての考え方】
本校では、以下の要領にて実施中。
中学生:授業時間内での課題提出を原則とし、授業出席の根拠資料とする
高校生:授業時間内での課題提出を原則とするが、当日中の提出であれば授業出席と認める

※高校生においては、授業内に完結する課題では学力の担保が困難

★オンライン授業においては課題の提出が出欠管理の根拠資料になる場合がある(文部科学省からの通達による)ので、あらゆる記録を残しておくことが重要です。

【宿題(課題)のやり取りに関わるメリット】
Google Classroomには以下のような宿題(課題)管理機能があり、家庭・学校双方の評判が良い。
・提出状況の管理
期限内の課題提出の有無が自動的に表示されるため、管理効率が飛躍的に高まる。

・ フィードバック機能
採点及びコメントをつけて返却でき、それらが記録として残り、生徒の学習効率が高まる。

・提出情報を担任と共有できるシステム
Classroomのリストに生徒とともに担任も含めておくことであらゆる情報が自動で共有でき、業務効率が飛躍的に高まる。

★本校の場合、Google Classroom導入前に一部クラスで別システムを導入していたため、複数のシステムが同時に稼働することになり、生徒の混乱を招きました。使用するアプリを含め、学内でしっかり精査し、教員間で(学年・教科を超えて)ルール化する必要があります。

【宿題(課題)のやり取りに関わるデメリットとその対策】
通常の授業以上に、生徒にも多くの負担が生じる。よって、以下のような対策を検討中。
・ 全授業の宿題(課題)の総量をチェックする管理者を設置し調整を行う。

・ 授業報告シートに課題の取り組みに要する想定時間を記入し、教員間での共有を図る。

・ 教員研修にて他校の事例を共有するなどし、教員の宿題(課題)のあり方について研究する。

★教科主任が各教員の授業の進捗や課題の取りまとめを行うが、上記課題をクリアするには,その教科主任を取りまとめる管理責任者が必要です。

11. 進路指導について

特に最終学年である高校3年生の生徒・保護者の抱える不安は大きく、以下の対応を実施・検討中。

・Zoomを用いた担任による生徒面談の実施

・Zoomによる進学指導センターとの個別進路相談の検討

・再開時期ごとの進路関係行事予定と指針の作成と配布(高3対象)

・再開時期ごとの成績算出に関わる予定の作成と配布(全学年)
 ※再開時期は6/1、7/1、8/1、9/1以降の4つの時期を想定

・高校3年生対象特別オンライン講習の実施

※担任によるZoom生徒面談は、通常の進路面談に加え、オンライン授業や家庭での過ごし方などについての声を直接聞くことができ、効果的

★通常は各大学から届いている資料等が今年は十分な情報量として届きませんでした。AO入試等の情報も突然ホームページ上で発表されるなど、情報は錯綜していました。教員・生徒双方がアンテナを高くして、最新の情報の取得に努める必要があります。

特に、高校3年生は受験が控えているので、生徒・保護者の抱える不安は大きいです。本校では、Zoomで担任との個別面談の他、進学指導センターの教員との個別面談や進路の行事、指針の配布をしました。

12. フィードバックと改善

休校措置の長期化の対策の視点のみならず、もとよりオンライン教育の質的向上は急務であり、現在以下の実行を検討中。

・月2回のオンライン授業スキル向上研修
学校全体でICTスキルを向上させるべく、専門家の指導の下、研修を実施。

・オンライン保護者会
対面での保護者会の実施が難しい中、オンラインにて実施し、保護者の不安の払しょくに努める

・オンライン授業の生徒による授業評価システムの導入
生徒の率直な意見、感想を集約し、教員側の課題を抽出、PDCAをまわし、授業改善を図る

★生徒によるオンライン授業評価については、正直今後の議論だが、将来的な導入を学内でオープンに議論していくことで、教員のICT活用に関する意識の向上が期待できます。


オンライン授業構築時に気をつけたいポイント

A) 学校編
・各家庭のネットワーク環境の把握
・生徒・家庭・教員との連絡体制の確立および周知徹底(Gmailアカウントの作成、Classroomへの招待など)
・ホームルームや授業の実施方法(Zoomの利用、動画配信など)、成績算出に関わる情報の生徒への周知徹底
・オンライン授業に関わる教員向け研修の実施(各種アプリ、プラットフォームの利用について、等)
・オンライン運営に関わる校務管理(成績の算出など)のガイドラインの策定と周知徹底
・ICT環境の確認(同時利用な回線数や所有するデバイスの確認など)
・以上を踏まえて各オンライン授業の実施状況および各生徒の学びの状況の確認(重要!)


B) 保護者編
・子どもの心身の健康の維持
・子どもの学習環境構築のサポート(Wi-FiやPCなどハード面及び学習しやすい環境づくり)
・保護者ご自身の心身の健康の維持(自宅内が長期に「密」の状態になり、ストレスが蓄積しやすい環境)
・万一近親者に新型コロナウイルス感染者が発生した際の対応確認(地域の相談窓口の把握)
・子どもの生活・学習に関する不安への対応(ご自身で抱えず、担任・カウンセラーへの相談)


C) 生徒編
・オンライン授業等へ「スムーズに」参加できるかどうか一連の流れを確認(メールの設定やアプリの利用方法について)
・オンライン運営によって心理面・身体面が生じたときの対処
(⇒保護者・担任への相談など・過度の我慢をしない)
・授業、宿題や課題の質や量の把握とコントロール
・副教材等を利用する場合の生徒負荷をコントロールする仕組みを導入
・進路や成績、学力や家庭学習方法、部活動や友人関係など、様々な悩みへの対処
(⇒保護者・担任・カウンセラー・友人などへ相談)


利用したツール(テクノロジー、組織体制図、アンケートなど)

A) Zoom
Zoom(ズーム)は、Zoomビデオコミュニケーションズが提供するクラウドコンピューティングを使用したWeb会議サービスの名称である。Zoomサービス内にミーティングルームを開設し、ミーティングIDやパスワードを共有するユーザー同士で多地点と同時にWeb会議を行うことができる
(主な特徴)
・Zoom ユーザー間で、無料Web会議が可能
・複雑な設定無しに、一般的なファイアウォールやNAT内からでも通信が可能
・ミーティング中、挙手をすることができる
参照:https://zoom.us/jp-jp/meetings.html


B) G Suite
G Suiteは遠隔学習機能に優れ、また教員の働き方改革、生徒の主体的・対話的で深い学びを実現可能にする。G Suiteには、Gmail、Google ドライブ、Googleハングアウト、Google カレンダーおよびGoogle ドキュメントなどの一般的によく使用されているGoogleのウェブアプリケーションが含まれている。教育機関は無料での使用が可能。
参照:https://gsuite.google.co.jp/intl/ja/features/


C) Classi
Classiは、学校のICT化を多角的にサポートする教育プラットフォームである。「授業・学習コンテンツ」「生徒カルテ」「コミュニケーション」の3機能があり、「授業・学習コンテンツ」は中学1年生〜高校3年生の授業用教材と全教科2万問を用意している。 「生徒カルテ」は授業の進行度合いや生徒の出欠や生活指導などを記録・集計する機能や宿題や小テストの生徒への配信・集計する機能があり質の高い面談指導を行うための活用が期待される。PCやタブレット、スマートフォンにも対応し、中学校、高校、専門学校など多くの教育現場で活用されている。
参照:https://Classi.jp/


D) 組織体制図
担任があらゆる関係者のハブ(繋ぎ目)の役割を果たすという意味で極めて重要だが、担任に入る情報が、オンラインの場合必ずしも生徒から直接入るとは限らない。授業担当と教科主任、学年主任を経由して担任に伝えられることも間々あり、各教員が組織内コミュニケーションおよび情報共有に対する意識を高く維持していくことが大事になる。また、校長をはじめ、幹部職員が、そのための啓蒙的指導を繰り返し実施しておくことで、この非常時のあらゆるリスクを低減させることが可能となる。


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E) アンケートツール
・Google Form
Google Formを用いて生徒・保護者の双方にアンケートを取ることが可能。回答者はスマートフォンでも答えることが可能なため、情報を短期間で収集しやすい。また、回答が自動集計されるため、紙の用紙によるアンケート集計より圧倒的に省力化が図れる。

実際の使い方としては、保護者の回答から対応が必要と感じたご家庭に担任から連絡を差し上げるなどし、生徒の家での生活および学習の様子などについて、聞き取り、対策を講じるといった流れになる。生徒の場合は、授業の理解度の確認等にも使用される。

また、教員からもオンライン授業での失敗事例・成功事例の情報を収集、共有し、万一、5月以降も休校が継続となるような事態に備え、より質の高いオンライン授業を学校全体で展開できるようアンケート結果のデータを分析し、改善に繋げている。


最後に

オンライン授業の導入から3か月が経ち、さまざまな改善点やそれに対する取り組み、経験したからこそお伝えできることがたくさんありました。
実際に生徒・保護者から寄せられた質問なども、今後ご紹介していきたいと思います。

このマニュアルが、より多くの子どもに対する学びに機会の提供につながることを願っています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

注釈:★本校の気づき

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