僕の国際バカロレア体験談: 大変だけど、頑張った先にある可能性
僕はこの春、英数学館高等学校のIB(国際バカロレア)クラスを卒業しました。春からは秋田にある国際教養大学に通います。
僕がIB(国際バカロレア)の学びで特に「好き」で「得意」だったヒストリーについての話や、次々と出される課題との付き合い方などをご紹介したいと思います。
いろいろなウェブサイトなどでは、「IBって大変!」
など書かれているのを目にしますが、本当に大変だったのか?
僕が実際に体験した国際バカロレア・ディプロマ・プログラムについてご紹介させてください。
ヒストリーを好きになったキッカケ
僕は小さいころからよく図書館へ行っていました。
図書館にはたくさんの本があるけど、よく見ると歴史に関する本がたくさんあることに気づきました。
図書館に行って歴史に関する本を手に取る。今思えばそれがヒストリーとの出会いでした。
歴史の本をどんどん読んでいくことで自然に知識が身に付いていたため、学校の授業では「あれ、これ知ってるぞ。」っていう見覚えのあるものがほとんどだった気がします。
知っている事だから楽しい。もっと読んでみようかな、もっと先に進んでみようかな。ってどんどん歴史に夢中になりました。
そのまま中学高校と一通りの教科を全部やったうえで、やっぱり歴史が一番好きだなって実感しました。
小さいころからの歴史の本を読むという習慣が、今ヒストリーが好きなことに繋がっているんです。
TOKの真髄「相手の視点に立てる」をヒストリーで実践
僕のヒストリーの勉強法は、我流なんですけど自分をその時代の人に当てはめてイメージトレーニングをするんです。
例えば時系列でものを覚えるときには、なぜこういうことが起こったのか、なぜこの人たちはこういう反応をしたのか、僕がその人だったらこういう行動をするよなって、他人事じゃなくって、自分に近づけて考えることで頭に入ってきやすくなるんです。
これは、Theory of Knowledge (TOK:知の理論)※1で最も必要で最も重要とされている「相手の視点に立てる」という学びに通じるものがあると思っています。
TOKに関する記事は↓
「自分なりのものの見方を育てる国際バカロレアの真髄TOK」
「結論より結論にたどり着くまでのプロセスが重要」
それから、歴史って必ず理由があって、結果があり、誰かが行動しています。この言葉を耳にしたことがある人もいるかもしれないですが、
歴史とは
「彼の・物語」
「HIS・STORY」
これは本当にその通りで、歴史には物語の流れがあるんです。その流れを掴むことが歴史で押さえるポイントです。その流れが掴めたら完璧です!
僕が一番好きな時期は、18世紀後半の産業革命から始まって第一次世界大戦の前くらいの時期です。
その時期に起こったことがずっとずっと後に影響してくる。第一次世界大戦の勃発とか、植民地の取り合いとか始まっていて、植民地政策があったからアメリカの差別が始まっていて、何百年と歴史に影響を与えている。
それ以降の歴史を学んで突き詰めていくと、結局は産業革命前後の時期に戻ることに気付くので、原点的な思想でそこがお気に入りです。
※1 Theory of Knowledge (TOK:知の理論)
IB資格取得のために必要な3つのコア(課題)のうちの1つです。TOKは、私たちが持っている知識を「知る」また「知っている」とはどういうことなのか、などを学習することで生徒の批判的思考を培うことを目的としています。
EEを通じて学んだ「無駄な時間」を作らないコツ
IBの学びは、次々に課題があって無駄な時間は使えません。
無駄な時間の使い方って人それぞれ違うと思いますが、僕がIBを経験して思った無駄な時間って「自分が打ち込んだものが無駄になる」ってことだと思うんですね。
だから、最初の段階でいろんなアイディアを出して選択肢を多くすることを無駄な時間を省くって切っちゃう人とかいると思うんですけど、むしろ最初の段階で可能性とかを見て、自分が一番いいテーマを選んでそれを一発で終わらせるなら、無駄な時間じゃなくて有効な時間なんじゃないかなって思います。
僕のExtended Essay(EE:課題論文)※2のテーマは2つ。
「第二次世界大戦において日本軍の兵士たちに武士道という概念がどれほど影響を及ぼしたのか」
「日本軍の行動にどういう風な影響をもたらしたのか、あるいはもたらしてなかったのか」
というものでした。
なんでこのテーマにしたかというと、歴史が好きで歴史をテーマにしようかなと考えたのも一つなんですけど、映画が好きなこともテーマ決めの重要な要素になりました。
戦争の映画を見てみると、第2次世界大戦の作品など武士道って日本軍とすごく結びつけられていると感じます。でも実際はどうなのかなって。
ハリウッド映画って物事を膨張させてすごいものに魅せるって傾向があるじゃないですか。映画を見ていて、本当にこうなのかな?国のために自ら死を選ぶ人間っているのかな?という疑問を持ったことが始まりです。
EEのテーマは自分の興味があるものにしたほうが良いとは思っていたんですが、じゃあ実際にどんなテーマにしようかなって悩んでいた時に、思い付いてこのテーマに決めました。
日常の中でふと浮かんだ疑問やひらめきからテーマ決めにつながることもあるので、メモなどで残しておくといいと思います。
※2 Extended Essay(EE:課題論文)
IB資格取得のために必要な3つのコア(課題)のうちの1つです。テーマを自分で決め、自分で調査・研究を行って学術論文にまとめます。
IAが教えてくれた、苦手を楽しいに変える課題の設定方法
僕は、より想像力を膨らましながら自分の毎日の生活に結びつけて学んでいくようなヒストリーが好きなので、その真逆って言ったらおかしいですけど、決まった方程式を覚えたらなんにでも応用できる数学が苦手でした。
苦手な数学の対策としてはとにかく方程式を頭に叩き込んで、片っ端から覚えないといけなくて、辛抱した3年間という印象です。
でも、その苦手な数学のInternal Assessment(IA)※3が一番印象に残っているんです。
僕の数学のIAは「NBAの選手の年俸とバスケの活躍が比例関係にあるのか」というテーマで研究をしました。
強い選手の年俸が高くなるっていうのはみんな知っている事ですが、例えばアシストとかスコアリングとかいろいろバスケの役割を見て、どの役割を一番多くしている人の年棒が高いのか、みたいな研究をしていてそれに関してはすごく楽しかったです。
苦手な数学でも自分が楽しいと思えるものを見つけて取り組んだことで、最も印象に残る課題の一つになりました。
IBの主体的な学びだと、苦手を苦手で終わらすのではなく、テーマ選びなど自分の工夫次第で苦手を楽しいものに変えることが可能なんです。
※3 Internal Assessment(IA)
学校内で評価される課題のことで、課題はレポートやプレゼンテーション、フィールドワークなど、様々な形式がとられます。IAは内部評価、反対に世界共通テストなどをExternal Assessment、外部評価といいます。
勉強自体をリフレッシュの手段にするCASの活用方法
「IBは大変」
「課題が多い」
「タイムマネジメントが難しい」
そういうIBのイメージってあると思います。
確かに勉強勉強で、慣れるまでは難しいこともたくさんあります。でもたくさんの課題と上手に付き合って、その中でリフレッシュしながら学ぶ方法もあります。
僕のおすすめは、CAS(課外活動)※4ですね。
例えば僕たちのCASでは、チャリティコンサートをしました。
資金調達のための企業への協賛のお願いから、出演者の募集、会場の手配から設営、開催後の収益金の寄付まで、一から全部自分たちで作り上げたことで、いつもの勉強とは違う経験ができ、大きな学びと同時にリフレッシュになったんです。
勉強しかないときは勉強の中でリフレッシュする。それが主体的に学び続けるコツの1つだと実感しました。
※4 CAS
Creativity(創造性)・Action(活動)・Service(奉仕)の略で、IB資格取得のために必要な3つのコア(課題)のうちの1つです。何かを作り上げたり行動すること、奉仕活動などで社会での経験を積むための課外活動です。
それぞれの時期で変わる家族のサポートの形
そして、これから国際バカロレアプログラム(IB)に向かうご家族をお持ちの方に、僕の家族のサポートの話をしたいと思います。
僕が小学校・中学校の時、親は僕に学校のことや勉強のこと、友達のことをちゃんと聞いてくれて、宿題の進捗状況などチェックをしてくれていました。
それってすごく重要なことで、小中学生くらいだと、余裕があれば気持ちも緩んで楽な方に流れてしまったりってあると思うんです。
だからその時期は、親が軌道修正したり、管理するべきことはしたりっていうのが大切な時期だと思うし、僕の親はそうやってサポートしてくれていました。
高校生になって1年生の時期まではIBのトライアル期間と言われていて、そこまではまだ見てくれていたんですが、2年生になって本格的にIBが始まると空気がガラっと変わっちゃうんですよ。
先生はもちろん、教室全体の雰囲気も「ここからが本番だ」っていう空気になるんです。
どんどん出される課題と向き合って、家に帰っても、こういう風なことしなくちゃ、こういう風なことを言われたからこういうプラン組まなきゃって頭の中が大乱戦になって家でもピリピリしてしまうことも多々あるわけですよ。
そこで親がすぐに、今何やってるの?サポートするよって入ってくると余計に頭が混乱しちゃうと思うんですね。
僕の場合は、IBが本格的に始まったときに親がその空気を察して一線を引いてそっとしておいてくれたのですごくありがたかったです。
子どもがIBをしたい。といったときにご家族の方も、IBって大変って聞くけど家族はどんなサポートをしたらいいんだろう?
って不安に思うこともあるかもしれません。
IBは自立的な考えを促進する学びなので、まずはそっと見守ってみるという形のサポートもあります。
僕がIB資格を取得できた要因の一つには、その時その時で最も適したサポートをしてくれた家族の協力があったのは間違いありません。
志望校は国際教養大学一択!
僕が春から通う国際教養大学(Akita International University:AIU)との出会いは、高校1年生の時でした。
高1の6月に英数学館で大学進学説明会がありました。
北は北海道大学から南は鹿児島大学まで、国内の名門大学全10校が参加する中で僕の目にはAIUだけが違って見えたんです。
AIU以外にも国際的な大学が多く参加していたし、AIUと同じ単科大学(学部が一つしかない大学)もあったんですが、AIUって他と違う、すごいなって僕が思ったところは、2004年に開学してまだ17年と若いのに数十年100年と続いている大学とAIUが同格で扱われている事です。
AIUのことを詳しく調べたり、先生や卒業生のインタビューを見たりして、1年間の留学が義務付けられているとか、国際性という面では日本でもトップクラスだということを知り、どんどん夢中になっていきました。
「志望校はAIU一択だ!」
気付けば、自分の気持ちは固まっていました。
AIUに絶対に行きたいという強い思いがあったので合格を勝ち取った今、すごくワクワクしています。
授業は100%英語。世界数十カ国から年間200人の留学生が学ぶ4人に1人が留学生という特殊な環境で、どんな化学反応があるのか、AIUでしか得ることのできない学びにすごく期待しています。
そして今はまだぼんやりとした「国際的な職に就く」というビジョンを、これからのAIUでの4年間で明確なものにするということが、僕の一番大きな課題だと思います。
たくさんの可能性、たくさんの選択肢が僕を待っていると思うとすごく楽しみです。
僕がIBを終えた今思うことは、確かにIBは大変だけど、頑張った先には必ず無限の可能性が広がっている!ということ。
ここで伝えられたことはほんの少しで、IBの魅力を全部伝えられたわけではないですが、僕の話を読んで少しでも多くの人に「IBに挑戦してみようかな」と思ってもらえたら、と願っています。