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あなたの知らないライブラリアン(図書館司書)

こんにちは。渡辺です。
突然ですが、ライブラリアン(図書館司書)って聞くとどんなイメージを思い浮かべますか?

本を並べている人。
本が好きな人。

それぞれイメージする司書像ってあると思います。

実はライブラリアンって、アメリカでは尊敬されるすごい専門職なんです!!

アメリカでライブラリアンを目指す場合、大学の図書館情報学の修士(Master's degree in Library Sciences)を修了して司書資格を取得していることが最低条件となっているんです。

そして国際バカロレア(IB)においても、学校図書館は重要な役割を持っているためライブラリアンは非常に重要な人材となるのです。

今回は、国際バカロレアの認定校である英数学館の学校図書館についてお話しします。

1.IBにおける学校図書館

英数学館は2016年に国際バカロレアの認定校になったわけですが、国際バカロレア機構(IBO)の定める要件を満たさなければ、認定を受けることはできません。

IBOの定める要件とは、教育上の理念や管理体制、カリキュラムや施設、教職員や組織等、そして学校図書館においては『図書館、マルチメディア、およびリソースが、プログラムの実施において中心的役割を果たすこと』(プログラムの基準と実践要綱)と記されています。

ディプロマプログラム(DP)の要件として、学校図書館はDPの実施を支援するのに必要な、量的に十分で、かつ内容的に適切な資料を備える必要があります。

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2.ライブラリアンの重要な役割

学校図書館にライブラリアンを置くことはIBの要件の一つではありませんが、ライブラリアンは『教員との協働において、カリキュラムが教科のねらいと目標に基づく最新で関連性の高いさまざまなリソースによってサポートされるようにするという非常に重要な役割を担っている』(DP:原則から実践へ)と明記されています。

ライブラリアンとしての重要な役割として、カリキュラムの開発や実施を教員と協働して学習活動を支えることがあります。すべての重要なDPカリキュラム文書について熟知する必要があります。

DPのコア科目の課題論文(EE)では、専門的な知識を持つライブラリアンのリサーチスキルを活かし、学問的誠実性を保証する、特に引用や参考文献の書き方などの技術的な面でサポートができると言えるでしょう。

3.IB認定校のライブラリアンの心構え

英数学館のライブラリアンは、IB候補校になるにあたってまずオーストラリアに1か月、それからすぐアメリカに渡って合計1年間の留学をしました。

現地でIB校の学校図書館を見学してたくさんの驚きと発見があったそうです。

留学前は、IB候補校になるということで気になることは専ら洋書の数!
要件の中に冊数は明記されていないしIBOの方に聞いても、「生徒が調べるのに十分な量。」としか言われないし本当にふわっとしていて…

洋書が何冊あればIB校として認定されるのか?誰か教えて~!状態だったようです。

そして、そのことばかり考えて洋書を買わなきゃ、揃えなきゃ、本棚を増設しなきゃと、結果としてお金を使うことばかり考えていたそうです。

ですが海外で見学した何校かの認定校でも、恵まれた環境の学校図書館ばかりではなく、大きな規模の学校でもうちの半分ほどの図書館スペースしかない学校や、日本の高等学校の平均蔵書冊数27,204冊(学校図書館2019年12月1日発行p.19)に対して蔵書数6000冊ほどの学校や、中にはライブラリアンがいない学校もあったそうです。

ただそれらの学校でも、図書館自体が小規模なら電子書籍の取り扱いを増やしたり、近くに関連大学など自由に利用できる図書館があれば本を借りたり文献はそちらで調べたりと、限られた空間や環境でちゃんと工夫されていて、図書館にあるものでサービスが提供されているし、できることをしていました。

留学を経て、様々なIB校を実際に自らの目で見て体験したことで、冊数にばかりこだわって、やらなきゃやらなきゃではなくて、あるものでできることもあると気づき、本の冊数とか数字的なものじゃなくていかに利用者にとって図書館が役に立てるかという意識が強くなったそうです。

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4.留学経験を活かして工夫していること

英数学館ではライブラリアンの留学経験を活かして決して広い大きいとは言えない限られた学校図書館という空間の中で、たくさんの工夫がされています。

目を引くのは洋書コーナー!

図書館全体の約1割を占める洋書コーナーは、英語の先生が作成したポップなどがあり、実にカラフルです。

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生徒が調べやすく使いやすい書架にするために、海外の図書館で研修を受けた際のディスプレイを参考にするなど工夫がされています。

・色分けしてファイルに分ける
・教科ごとに棚分けする
・卒業生のEEを展示する(館内閲覧のみ)
・季節のディスプレイをする
・本の装備方法

などなど、一目見ただけで工夫を見つけることができました。

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洋書って背表紙を見るだけでも楽しくてワクワクしますよね!
ただ、ここにもライブラリアンならではのお悩みが…。

洋書はサイズがバラバラのため、書架のスペースをどのように使うかが悩みの種です。

スペース確保は図書館の永遠のテーマですよね。

5.ライブラリアンの実務

IBの学びは教科書がないため、読み物としてではなくどちらかと言えば学習のための本を選書します。

IB候補校になる時に、きちんとした専門の本屋さんを紹介してもらって、セレクトしていただいたものの中からまず1000冊ほど購入しました。

洋書を個人で注文すると、時間がかかったり、下手したら洋書が届かず迷子になることもあるので、ちゃんとルートがある本屋さんから購入することをお勧めします。

そうして選んだ洋書は、生徒が情報収集しやすいようにディスプレイし、情報収集で躓かないようにデータベース、文献をすぐに調べられるようなシステムを整えたり、Wi-Fi環境を整えたり、できうる限りのサポートをしています。

EEのサポートでは、生徒が選んだテーマによっては普通の雑誌などでは手に入らない場合や、オープンアクセスの資料も少ない場合もあり、所蔵している図書館や国会図書館などに依頼して、必要な論文や本を必ず取り寄せるようにしています。

大学図書館などは、個人では文献複写も取り寄せできないことも多く、できても手続きが必要で割と大変ですが、学校図書館を通すとすぐ依頼を受けてもらえます。

それは図書館同士の相互協力関係で成り立っていて、図書館のネットワークは信頼関係のもと、広く情報を提供するという図書館ならではの特色があります。

公共図書館の協力も重要で、例年生徒と公共図書館に行ってデータベースの使い方などを担当の方にレクチャーしてもらい、生徒が実際にデータベースを使えるように研修をしています。

公共図書館は郷土資料が豊富で、この研修以降個人で利用する生徒もいます。また、公共図書館同士のネットワークを利用して、広島市にある県立図書館の本を福山市の公共図書館で借りることもできます。

公共図書館での研修時期など担任の先生と話しあい、テーマを決める前には実施するようにしています。

ライブラリアンとして、先生との協力体制をしっかり築くことが生徒のサポートにつながります。

教職員や他の図書館の協力を仰ぎながら、生徒が求める情報や資料を入手し提供できる体制づくりを進める必要があります。

生徒にはそうした学校図書館の機能を有効に利用し、自分の学びに活かしてほしいと思っています。

ただ図書館の業務だけをするのではなく、積極的に生徒と関わりサポートをする。それこそがIB認定校のライブラリアンとしての役割です。

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